ライフスタイル
ノコギリヤシには副作用がある?腎臓や脱毛、高血圧への影響は?
特に男性のトイレの悩み対策で広く知られるようになってきた「ノコギリヤシ」ですが、副作用はあるのでしょうか?腎臓や脱毛、さらに血圧への影響も含め、ノコギリヤシの副作用情報についてまとめました。ノコギリヤシを正しく摂取するための判断材料にしてください。

目次
サプリメントの副作用について
「サプリは副作用がない」は誤解です。
サプリは食品と定義されており、日常の食生活の中で不足しがちな栄養素や機能性に優れた成分を補給するものです。また医薬品に比べると比較的作用が穏やかです。以上のことから、通常、副作用がなく安全であると誤解されがちです。
しかし、実際にはサプリの過剰摂取、薬との相互作用や食べあわせ、体調や体質によって副作用が生じる場合があります。「サプリは安全である」という考えは誤解です。
サプリ購入の際には、副作用情報等の収集を
医薬品との相互作用からくる副作用もあります。サプリの種類によっては医薬品との相互作用が報告されているものがあります。摂取の際は注意深い判断が必要になってきます。
判断材料としては、原料情報(成分・含有量や剤型など)から安全性情報(相互作用や禁忌など)までありますが、自己判断では自信のない場合は医師・薬剤師あるいはサプリに関するアドバイザーに相談の上、摂取することが望ましいでしょう。
ところで、ノコギリヤシってなに?
ノコギリヤシの基本情報
ノコギリヤシとはノコギリのようなギザギザした葉を持つことにちなんで名付けられ、別名は英語名でソーパルメットと呼ばれます。北米南東部原産のヤシ科シュロ属の低いヤシの木で、ハーブの一種です。
ノコギリヤシ (ソウパルメット) [英]Saw palmetto、Sabal [学名]Serenoa serrulataまたはSerenoa repens、別名としてノコギリパルメットがある。果実は「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に区分される。
ノコギリヤシの使用部位は?
ノコギリヤシは秋の終わりから冬のはじめにかけて、赤黒い果実をつけます。また、その果実が使用されます。果実には有効成分と考えられている脂肪酸を多く含んでいます。
ノコギリヤシはどこで獲れるの?
ノコギリヤシは、北アメリカ大陸固有種で、大西洋岸平野からメキシコ湾岸低地(サウスカロライナ、ルイジアナ、ジョージア、フロリダ)に生息しています。
なぜ、ノコギリヤシを使うのか?
ノコギリヤシの起源は北米にあり
北米インディアンは、古くからノコギリヤシの果実を男性の強壮や利尿・泌尿器系に対して効果があると信じて、膀胱炎や泌尿器系の炎症、睾丸の委縮、男性機能の後退、前立腺の肥大などを対象に食用として用いていました。
ヨーロッパにおけるノコギリヤシの利用
ヨーロッパでは軽度から中程度の良性前立腺肥大による排尿障害の改善薬として古くから使用されています。
ドイツ、イタリア、フランスなどでは前立腺肥大症の初期治療薬として認可されています。ドイツでは、前立腺肥大症の治療薬として、薬局などで販売されています。
漢方薬としてのノコギリヤシ「棕櫚子(シュロシ)」
中国では泌尿器疾患の漢方薬「棕櫚子(シュロシ)」という名で、古くから知られています。シュロシとは「ヤシの木の実」という意味で、泌尿器疾患以外にも利尿作用であったり強壮作用があることでも知られています。
日本におけるノコギリヤシの利用
日本では、いわゆる健康食品として1990年代に販売が開始。前立腺領域の製品がなかったことや、高齢化による潜在需要の増大によりその認知度と普及は共に高まっています。
尿の出が少ない、残尿感がある、日中・夜間の頻尿、夜間のトイレ回数が多く安眠できないなど、前立腺肥大症特有の問題の解消や緩和に利用されます。
ノコギリヤシの作用について
薬理作用としては、5αリダクターゼ阻害作用、アンドロゲン受容体遮断作用、抗炎症作用、細胞増殖抑制作用、α1遮断作用、鎮痙作用などが報告されています。
臨床試験では、ノコギリヤシ(320㎎/日摂取)の6か月の投与により、前立腺肥大症やそれに伴う頻尿に有効であるとの報告もあります。しかし、肥大した前立腺の縮小効果はないと言われています。さらに排尿関連だけでなく、抜け毛や薄毛の予防効果にも注目されている素材です。
そもそもノコギリヤシって安全なの?
天然物であるノコギリヤシ
ノコギリヤシの果実は、天然物のため副作用が少ないという利点があります。複数の副作用に関する報告がありますが、いずれも軽度で耐用性良好な素材として知られています。ノコギリヤシは3年にわたる臨床試験により安全性が確認されており、適切に使用する場合にはおそらく安全であるとされています。
報告されているノコギリヤシの副作用情報
重篤な副作用情報なし
報告されている副作用としては、胃腸障害の報告が多く、頭痛、高血圧(症)、鼻炎、疲労感、無力感、心悸亢進、低血圧、尿閉、関節痛、筋肉痛、性欲減退、めまい、不眠、肝障害、湿疹がありますが、経口摂取の副作用は軽度なものです。
ノコギリヤシ摂取時の高血圧への影響は?~これって副作用?その1~
副作用情報に高血圧症や血圧の増加が報告されています。そのため、高血圧症の人は慎重に使用する必要があります。一方で、血圧が急激に下がったという副作用報告もあります。ノコギリヤシの作用を考慮すると、高血圧も低血圧も両方の副作用を引き起こす可能性が考えられます。
副作用を起こさないように
副作用を起こさないようにノコギリヤシを摂取する際の注意点として、過剰摂取は避け、1日の摂取目安量を守るのはもちろんのこと、血圧に影響を与える医薬品(降圧剤等)、高血圧対策ハーブやサプリとの併用にも充分に注意しましょう。それら医薬品、ハーブおよびサプリと併用する際は、専門医に副作用の可能性について確認することをお奨めします。
ノコギリヤシ摂取時の腎臓への影響は?~これって副作用?その2~
副作用との関連の前に
前立腺は膀胱の出口のところに尿道を取り囲むようにして存在する男性特有の臓器です。前立腺肥大症の典型的な症状の1つに尿が出にくい、つまり排尿困難があります。排尿困難に先立って、尿の回数が多くなります。しかし、その回数が多いわりに、なんとなく尿が出にくいという症状を伴っているのが特徴です。
つまり尿が出し切れていない状態で、これを残尿といいます。ノコギリヤシは、こういった症状の緩和に役立つと言われています。
ノコギリヤシが腎臓に与える影響
前立腺肥大症の合併症の1つに挙げられる腎機能障害では、膀胱内の残尿が多くなり、膀胱にたまった尿が尿管へと逆流するようになり、腎臓の機能が低下してしまいます。これを放置しておくと最悪の場合、腎不全になることがあります。
ノコギリヤシが直接、腎臓機能を改善するのではなく、前立腺肥大症に伴う頻尿、残尿感や尿閉の症状を改善することで、それらが引き起こす腎臓への負担を軽減することから、ノコギリヤシが間接的に腎臓機能をサポートしているといえます。
ノコギリヤシで腎機能障害の副作用がでた例
ノコギリヤシが腎臓をサポートしている可能性がある一方で、ノコギリヤシの腎臓に対する副作用が、「健康食品のノコギリヤシが原因と考えられた横紋筋融解症の1例」として報告されています。
これは健康食品が原因で横紋筋融解症が生じた、初めての副作用報告となります。
通信販売で購入した5種類の健康食品を服用した翌日より38℃台の発熱が出現した.血液検査にて腎機能障害,炎症反応の上昇,クレアチンキナーゼ(CK)の高値を認めた.病歴と検査データから横紋筋融解症,急性腎不全が疑われ,大量輸液にて解熱し,改善を認めた.5種類の健康食品のうちノコギリヤシの薬剤リンパ球刺激試験(DLST)が陽性であり,ノコギリヤシによる横紋筋融解症と考えられた.
ノコギリヤシと脱毛への影響は?~これって副作用?その3~
ジヒドロテストステロンの脱毛との関係性
男性ホルモンであるテストステロンが、5α‐リダクターゼという酵素と結びつくと、より強力な作用をもつジヒドロテストテロンが生成されます。
実は、このジヒドロテストステロンが脱毛に悪影響を与えていることが知られています。つまり、脱毛を防ぐにはこの「ジヒドロテストステロン」の生成を抑制すればいいということになります。
ジヒドロテストステロンは、母親の胎内にいる時に男性器を発達させるために重要な役割を果たす男性ホルモンの一種ですが、それ以外は「脱毛の原因、体毛の増加、前立腺肥大など」、男性にとって良い影響を与えるものではないようです。
ジヒドロテストステロンとノコギリヤシの関係
ノコギリヤシには、ジヒドロテストステロンを作り出す要因となる「5αリダクターゼ阻害」作用があります。よって、ノコギリヤシには、ジヒドロテストステロンの生成を抑制し、脱毛を予防する効果があることが期待できるのです。
実際に、臨床試験でもその改善作用は確認されています。AGA(進行性男性型脱毛症)に対する効果に関してAGA治療薬であるフィナステリドとの比較試験も実施されています。フィナステリド程の効果はないものの、ノコギリヤシもAGAの改善をもたらすことが確認されています。
AGA治療の副作用である「初期脱毛」について
フィナステリドは「初期脱毛」と呼ばれる副作用があります。この副作用は、ヘアサイクルの乱れによって生まれた薄く弱い髪の毛が抜け落ち、丈夫な髪の毛が生えるための準備期間と考えられています。つまり「副作用」と言えど、歓迎すべき「副作用」なのです。
ヘアサイクルの乱れが脱毛の原因
毛髪には「成長期」「退行期」「休止期」の3つのヘアサイクルがありますが、このヘアサイクルが乱れると脱毛が進行します。このヘアサイクルを狂わせるのがジヒドロテストステロンなのです。
ノコギリヤシ摂取によって副作用「初期脱毛」が起こる可能性は?
ノコギリヤシを摂取するとジヒドロテストステロンの生成が抑制され、正常なヘアサイクルに戻ることが考えられるので、副作用である「初期脱毛」がおこることは十分に考えられることです。ただし、脱毛期間が長引く場合は別の副作用の可能性を疑い、専門医に相談して下さい。
ノコギリヤシを飲む時に注意することは?
副作用を起こさないための注意点
ノコギリヤシの過剰摂取による、吐き気やめまい、便秘、下痢などが報告されています。医薬品との相互作用情報として抗凝血剤や抗血小板との併用で、出血傾向が高まる可能性があります。さらに、男性ホルモンに作用するため、ホルモン治療を受けている場合には、医師に相談してください。また、妊娠中および授乳中のノコギリヤシの摂取は避けてください。
副作用以外のノコギリヤシ摂取時の注意点
ドイツコミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)は、ノコギリヤシを摂取する場合、定期的に医師の診察を受けるべきであると指摘しています。ノコギリヤシは症状を緩和しますが、前立腺を縮小する効果はありません。そのため、前立腺がんの進行を見逃す可能性があるためです。

ノコギリヤシの副作用についてのまとめ
今回は、ノコギリヤシの副作用情報を中心にまとめました。基本、天然物であるため副作用は少なく、これまでの副作用情報としても重篤な報告はありません。血圧に関しては副作用として上がったり下がったりする可能性があります。また高血圧症の方は、副作用の注意が必要です。
一方、腎臓や毛髪に対しては、よい影響を与えているようです。副作用となる「初期脱毛」に関しても悲観するものではありません。
日本ではノコギリヤシは食品として販売されているため、成分の規格値(含有量)も各メーカーでばらばらです。また医薬品と異なり購入に関しては、一般消費者一人ひとりの判断に基づいて行われる必要があります。
最初に述べた判断材料に基づき、適切な商品の選択を行うことが重要になってきます。特に副作用情報等の安全情報については、幅広く情報収集を行った上で、購入するかどうか判断されることをお奨めします。
またサプリはあくまでも足りない栄養素や機能性成分の補給です。主食・主菜・副菜を基本に、食事のバランスを心がけることも副作用を起こしにくくする1つの方法でしょう。